2008年07月24日
医は仁術
『医は仁術なり。』
という言葉があります。
この言葉は、
特に江戸時代に盛んに用いられた倫理的標語なのだそうです。
その思想的基盤は、なんと平安時代にまで遡り、
また明治時代に近代的な西洋医学を取り入れた後も、
現代まで、
長く日本の医療倫理の中心的な標語として用いられてきました。
『仁』とは、
儒教における最重要な「五常の徳」(仁・義・礼・智・信)の
一つで、主に「他人に対する親愛の情、施しの心、優しさ」を
意味しています。
(仏教的にさらに言えば、『他縁大乗心』でしょうか・・・。)
ちなみに、『義』とは正しい行いを守ること。
そして、人助けの心、義侠心。
『礼』とは礼儀、礼節の心。
『智』とは正悪を理解する知恵。
『信』とは信義・信頼。
こう考えると、『医』は『仁術』だけの話ではなく、
『義術』『礼術』『智術』『信術』
『五常の徳』全てが当てはまりそうな気がしてきます・・・。
しかし、最近では、なんと、
この言葉のパロディである
『医は算術なり』
という、たわけた言葉の方が一般的になっており、
今ではこちらが本家本元で、
『医は仁術なり』という言葉の方がパロディみたいに思われているという
何とも笑えない話も聞いています・・・。
『医療』という仕事は、
人さまの『命』を直接的に取り扱う仕事です。
よって、そこには、
より真剣さ、緻密さ、厳しさといったものが必要になります。
医療というものは、
極論すれば、
医療者と患者さんとの『命』のやり取りです。
我々医療者は、患者さんと
実は『命』をかけた
『組み手』『真剣勝負』をしているようなものなのです。
これほど密度の濃い人間関係が、他にあるでしょうか・・・?
私は、そういう意味で、
「医は仁術」ではありますが、
「医は武術」の側面があると思っています。
そして・・・
「武術」「武道」を入れてもいいのでは・・・?
なんて独り思うこともあります・・・。